「らんたん」柚木麻子
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戦前〜女性の教育や権利改革に携わった女性たちの物語です。河合道、渡辺ゆりがメインの主人公となります。彼女たちの幼少期から河合道が亡くなるまでが描かれています。
日本でまだ女性の教育すら認められていなかった頃、アメリカへ留学した彼女たちが学び、帰国してから女性のための学校を作っていこうとする話です。
史実を基にしたフィクションとのこと。実際に活躍した日本人や米国人が登場人物として描かれています。登場人物はかなり多く、新渡戸稲造、津田梅子、大山捨松、有島武雄、手塚らいちょう、広岡浅子、市川房枝、松村たねこ、村岡花子、柳原白蓮、野口英世、白洲次郎、エリザベスヴァイニング、ロックフェラー、ボナーフェラーズ・・・などなど。全くその辺りには詳しくなかったので、今回作品を読んでから、wikipediaで調べた人も沢山。意外なところで、意外につながっているのかと驚き多数でした。
女性同士のつながりを強調している作品でもす。主人公の河合道と渡辺ゆりの絆もそうですが、津田梅子と大山捨松の話もとても興味深かったです(津田梅子に関しては、書籍やドラマ化された作品が沢山ありますね)。
そして男性との関わりの中では、河島道の物語の中で、有島武雄の位置付けが大きいことがやや印象的でした。有島武雄の「カインの末裔」「或る女」などは未読(暗そうで読む気になれなかった)でしたが、今後見てみようと思います。作中では有島武郎は女性たちにまさに「ボロクソ」に言われていました。有島武雄は現代に存在していたら、まさにまとめサイトか何かでボロクソに批判されていたような人物像なので、仕方ないかもしれません笑。
大河ドラマだという書評がありましたが、その通りだと思います。登場人物がそれぞれ生き生きと描かれていて、映像化も面白い。ドラマ化が十分にイメージできる作品です。
何かを成し遂げる人は初めから「成し遂げよう」としているのではなく、淡々と目の前にあることを乗り越えていくうちに、結果として何かを達成することになります。まさにそんな主人公たちのお話でした。
新渡戸稲造いわく、日本人は提灯で自分の足元しか照らさない、何か起きても一人で責任を負ってどうにかしようとする。それではダメで、当時の欧米のように街灯でみんなの足元を照らさないといけない、みんなで問題を解決しなければならないと(意訳)。それを体現して、最終的に学校を作り上げた女性たちです。
彼女たちが作った学校は、現在も恵泉女学園大として続いているそうです。園芸と平和を基軸においた学校だそうですが、どうしてそのような教育方針が出来上がったのかは、震災や世界大戦を通じて、主人公たちがどう生きたのか、作品を読んでいくとなるほどと納得できます。残念ながら、現在の大学・大学院は2024年より学生募集を停止するとのこと。少子化の影響もあるのでしょうか。残念ですね。
柚木麻子さんの作品で「Butter」もかなり衝撃的な作品でした。こちらも実際に起きた事件を基にしたフィクション。おそらく誰もが知っているあの事件を基にしています。
そして読むと、高確率で高級バターを買いたくなります笑
ショックだったのは、著者が自分と同世代だったこと。同じ歳でこのような情報収集、文章の組み立て、人生観の表現をできるというのは、本当に素晴らしいなと思いました。
柳原白蓮にスポットを当てた、林真理子さんの「白蓮れんれん」
これも数年前に読みましたが、今回の話とつながっていてまた再読したくなりました。
良い本を読むと楽しくなります。お勧めの本です。
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